9月15日、酷暑の日本から今回のUS TOURのスタートとなるサンフランシスコへと飛び立った貞夫さん。約9時間のフライトを経て現地に降り立つと、日本との気温差を加味してもちょっと肌寒いお天気。現地の方の話によると、通常は9月が1年のなかで一番暑い時期らしいのですが、今年は異常気象なのかずっとこんな調子だとのこと。
さて2年前、ここサンフランシスコは“YOSHI’S”にて日本人バンドを率いて演奏を行った貞夫さんですが、今回は昨年リリースしたアルバム『イントゥ・トゥモロー』を引っさげてのツアーということで、アルバムにも参加している次世代のジャズ界を担うニューヨークのヤング・ライオンたちとの公演となりました。まずは若くしてファースト・コールの地位を固めつつあるドラマー、ジョナサン・ブレイク、弱冠25歳とは思えないほどの落ち着きとメロディックなプレイを聴かせるベーシスト、ベン・ウイリアムス。そして、今回が初共演となるピアニスト、ダニー・グリセットととのカルテット。貞夫さんとこの若きジャズ・エリートたちがステージ上でどんな化学反応を見せるのか、想像するだけでワクワクしてきます。
翌日、この日サンフランシスコ入りしたメンバーと貞夫さんは“YOSHI’S”での公演に向けてのリハーサルを行いました。場所は“レノン・スタジオ”。その名の通り一見ロック・テイストのリハーサル・スタジオですが、中に入るとまるで倉庫のような広さと高さをもつ開放的な空間に、温かな日差しが差し込み、とてもリラックスした雰囲気を感じさせる場所でした。
久しぶりの音合わせにも関わらず、細かい修正を除いては2セット分の曲を一通りプレイしただけで終了。貞夫さんも、彼らには何も言わなくても求める音を返してくれると言わんばかりに終始満足そうな笑みを浮かべ、これから始まるツアーに自信を深めている様子でした。
そして始まったサンフランシスコ”YOSHI’S”の3days公演。ここ“YOSHI’S”は西海岸随一を誇るジャズ・クラブとしてだけではなく、シェフの神尾氏が腕を振るう日本料理も有名。みなさんも“YOSHI’S”へ行かれた際はジャズと料理をたっぷり堪能してくださいね。その神尾氏の創る料理に元気をもらったメンバーは初日から表現力あふれるプレイとタイトなグルーヴで、集まった大勢のお客様をナベサダ・ワールドへと誘います。同じ曲とは思えないほど日によってその表情を変えてゆく曲たちに、貞夫さんも目を細め、ソロが終わってメンバーに握手を求めにゆく貞夫さんの姿に、このツアーの成功を確信しました。
中でも印象的だったのが、ステージにかぶりつきで観ていたアメリカ人の女性が貞夫さんの流麗なバラード曲<ディープ・イン・ア・ドリーム>でこぼれる涙を拭っていたこと。この曲にどんな思い出があるのか、それとも美しいサックスの音色に何か心に去来するものがあったのか、理由はわかりませんが、人を感動させ癒し勇気づける音楽の力を改めて実感しました。
“YOSHI’S”のスタッフのみなさん、そして現地の方々の支えもあって、サンフランシスコに多くの感動と思い出を残したメンバーは次の公演地であるシアトルへと向かったのでした。
つづく。